マキマは『チェンソーマン』に登場する主要キャラクターのひとりで、
公安対魔特異4課のトップであり、内閣官房長官直属のデビルハンターとして登場します。
主人公デンジをスカウトし、仕事も生活もすべてを導いていく“憧れの女性”として描かれる一方で、
物語が進むにつれ、その正体が「支配の悪魔」であり、物語の黒幕であることが明らかになります。
マキマは作中で何度も殺されながらも復活する、ほぼ不死身ともいえる能力を持っています。
それにもかかわらず、最終的にはデンジの手によって命を落とすことになりました。
読者の間でも「なぜマキマは最後だけ死んだのか」「あの生姜焼きのシーンはどういう意味?」と、
強烈な印象を残したラストについて疑問の声が多く上がっています。
ここでは、マキマが死亡した理由と、生姜焼きの場面の意味を中心に整理・考察していきます。
マキマはどうして死なないはずだったのか
何度殺されても復活してきたマキマ
物語前半から中盤にかけて、マキマは何度も命を落としかけます。
新幹線の車内で銃撃されて倒れた場面や、
「銃の悪魔」による大規模な攻撃で複数回死亡が確認された場面など、
普通の人間であれば確実に死んでいる状況でも、彼女はそのたびに復活してきました。
読者の多くが「このキャラは倒せないのでは?」と感じたのも無理はありません。
「死を肩代わりさせる」契約による実質不死身
マキマが生き延びてこられた理由のひとつが、日本政府との契約です。
内閣総理大臣と交わした契約により、マキマに向けられたダメージは、
「適当な日本国民の病気や事故」として肩代わりされる仕組みになっていました。
つまり、マキマに対してどれだけ攻撃しても、その“死”は別の人物へと転嫁され、
マキマ本人は何度でも立ち上がることができる状態だったのです。
このため、理屈の上では日本国民がいなくならない限りマキマは死なない、
ほぼ無敵に近い存在だと考えられていました。
それでもマキマが死んだ理由──「食べられた」から
攻撃ではなく「一緒になる」行為だった
そんなマキマを打ち倒したのが、デンジが選んだ「食べる」という方法です。
一見すると常軌を逸した行動ですが、ここには重要なポイントがあります。
内閣との契約はあくまで「マキマに対する攻撃」を対象としていました。
デンジは、マキマを傷つけようと“攻撃した”のではなく、
「マキマとひとつになりたい」という歪んだ愛情と執着から食べることを選びます。
この行為は、契約上「攻撃」と認識されなかったと考えられます。
その結果、マキマの死が他者へ変換されることなく、本当の意味で“消化されてしまった”と解釈できるわけです。
カニバリズムという極端な選択
デンジは、マキマの体をさまざまな料理にして口にしていきます。
それは復讐でありながら、同時に「罪を一緒に背負う」という、彼なりの歪んだ愛情表現でもあります。
マキマを倒す方法が見つからない中で、
デンジにしか選べなかった、そしてデンジだからこそ踏み切れたやり方だったと言えるでしょう。
生姜焼きシーンの意味と“マキマ定食”
デンジはマキマの体を、味噌汁やハンバーグ、カツ、カレー、鍋など、
日常的なメニューにして食べていきます。中でも印象的なのが生姜焼きです。
彼は調理しながら、「マキマさんの罪は俺も一緒に背負う」と語り、
「マキマさんってこんな味か」と呟きながら、淡々と食事を続けます。
この場面はあまりにも衝撃的で、読者の間では「マキマ定食」として語り継がれるようになりました。
マキマの死は本物か?ナユタの存在が示すもの
イエスと聖書を連想させるモチーフ
作品全体を通して、天使や騎士など聖書を思わせるモチーフが散りばめられていることから、
この“食べる”行為も宗教的イメージと結び付けて語られています。
キリスト教における「最後の晩餐」では、イエスがパンと葡萄酒を弟子たちに示し、
「これは私の体」「これは私の血」と語るエピソードがあります。
これを重ねて見ると、
- マキマ = イエスのように「自分の体を差し出した存在」
- デンジ = 弟子の立場でそれを受け入れる者
- 肉と料理 = 共に生きるための“体”の象徴
という構図が浮かび上がります。
マキマが姿を消しても、
「自分の中に取り込んで、一緒に生きていく」というデンジの強い感情が、
このショッキングな演出に込められているとも考えられます。
「支配の悪魔」は輪廻転生する
作中では、悪魔は完全には消滅せず、
その名前が恐れられ続ける限り、別の姿で生まれ変わるという設定が語られています。
物語のラストで登場する少女・ナユタは、
支配の悪魔が新たな個体として転生した存在だと示唆されています。
デンジがその指を噛まれた際、「マキマと同じ噛み方だ」と感じる描写もあり、
支配の悪魔としての“本質”が引き継がれていることがわかります。
ナユタの登場が意味する「マキマの終わり」
支配の悪魔が新しい個体として現れたということは、
それまで現世に存在していたマキマという個体は完全に退場したということでもあります。
つまり、「支配の悪魔」という概念そのものは残りつつも、
“マキマ”という人格・身体は、デンジに食べられたことで終わりを迎えた、と解釈できます。
まとめ|マキマの死は「倒された」のではなく「取り込まれた」結末
不死身とも思われたマキマが死亡した背景には、
- 攻撃を他人の死に変換する契約の存在
- 「攻撃ではない行為」である“食べる”という選択
- カニバリズムと宗教的モチーフを組み合わせた演出
- 支配の悪魔としての転生と、マキマ個人の終焉
といった複数の要素が重なっています。
デンジはマキマを憎みながらも、最後まで彼女を愛していました。
その矛盾した感情の行き着いた先が、「一緒に背負うために食べる」という極端な選択だったのでしょう。
マキマというキャラクターの死は、単なるラスボス撃破ではなく、
愛情・支配・依存が絡み合った、非常に複雑な“終わり方”として描かれています。