『HUNTER×HUNTER』は1998年に週刊少年ジャンプで連載が始まり、連載再開のたびに話題となるほどの人気作品です。
今回は「クルタ族の殺害は幻影旅団によるものではないのでは?」というテーマのもと、その真相について考察していきます。
クルタ族とは、クラピカの故郷である民族のことで、感情が高まると目が赤くなるという特異な体質を持っています。
この赤い目は「緋の目」と呼ばれ、「世界七大美色」の一つとされ、裏社会では非常に高値で取引される希少な美術的価値を持つ存在とされていました。
そのため、クルタ族はしばしば人身売買の標的とされ、残酷な仕打ちを受けることもありました。
あるとき、クラピカ以外のクルタ族がすべて殺され、緋の目だけが抜き取られた状態で発見されます。
この出来事を知ったクラピカは、幻影旅団への復讐を誓い、ハンターを目指すことになります。
当初、クルタ族を壊滅させた犯人は幻影旅団とされてきました。
しかし、物語が進む中で「真の黒幕」の存在が徐々に明らかになってきています。
原作の第38巻では、幻影旅団の結成初期のエピソードが描かれ、その行動や動機を知ることで、彼らが本当にクルタ族を皆殺しにしたのか疑問が生じます。
さらに、ツェリードニヒやモレナ一族といった、緋の目を収集しているマフィア組織の存在も浮上しています。
彼らが裏で何らかの形で関与していた可能性も否定できません。
もしそうであれば、クルタ族の皆殺しは幻影旅団の「冤罪」であるとも考えられます。
この記事では、「クルタ族を本当に滅ぼしたのは幻影旅団だったのか?」という視点から、できる限り論理的に考察を進めていきます。
クルタ族の殺され方は幻影旅団への濡れ衣?
幻影旅団とクルタ族への襲撃
幻影旅団が完全に無実かと問われれば、それは事実とは異なります。
彼らがクルタ族を襲撃したことは確かであり、クラピカを含めて双方がその出来事を認識しています。
ウヴォーギンやパクノダといった当時の団員も、「大きな仕事だった」「相手は手強かった」と発言しています。
このことから、両者の間で激しい戦闘があったことは間違いありません。
シーラが旅団を呼び寄せた可能性
先に触れたように、シーラという女性が元幻影旅団の4番目の団員であり、何者かによって殺害された可能性があります。
彼女がクルタ族に接近した理由は明確ではありませんが、クラピカやパウロに優しく接し、知識を授けた人物として描かれています。
しかし、その内心や動機については不明のままです。
彼女が幻影旅団の一員としてクルタ族に接触し、緋の目を目的としていた可能性も完全には否定できません。
重要なのは、彼女がクラピカたちのもとを突然去った直後に、大量虐殺が起こったという点です。
最初にクルタ族を発見したのが「旅人の女性」であったことから、その人物こそがシーラであり、彼女が幻影旅団の来訪を手引きしたのではないかと考えられます。
シーラはその後一切登場しておらず、真相は今なお不明です。
幻影旅団は緋の目を収集する目的ではない
クルタ族襲撃への関与は事実ですが、その目的は明らかにされていません。
ただ、幻影旅団は「不必要な殺しや略奪はしない」と自ら語っており、異色の盗賊集団でもあります。
彼らが緋の目を金銭目的で収集していたという仮説は、信ぴょう性に欠けます。
金目当てならば、戦闘をせずとも脅迫など別の手段で得る方が効率的です。
そのため、幻影旅団が緋の目を集めることを目的に行動したとは考えにくいと言えるでしょう。
したがって、動機は依頼を受けたこと、あるいは仲間の仇討ちの可能性に絞られてきます。
殺害方法が幻影旅団の手口とは異なる
注目すべき点は、クルタ族の殺され方そのものです。
確かにクラピカに対しては、「鎖野郎」と敵意をむき出しにしている場面も見られます。
幻影旅団は、仲間を殺された場合や助ける必要があるときは、敵を容赦なく排除する傾向にあります。
しかし、無差別な虐殺を行う集団ではありません。
仮にそうであれば、ヨークシンでより大規模な殺害事件が発生していたはずです。
実際にはそのような描写がないため、幻影旅団がクルタ族を皆殺しにする理由は見当たりません。
よって、この事件が本当に彼らによるものなのかには疑問が残ります。
なぜ冤罪なのか理由を考察
黒幕はツェリードニヒの可能性がある
ここで浮上するのが、真犯人としての「ツェリードニヒ」の存在です。
冒頭でも触れた通り、彼やモレナ一族は緋の目を収集し、非道な行いを重ねてきた背景を持っています。
ツェリードニヒはカキン王国の第4王子であり、人体に強い執着を持つコレクターでもあります。
彼のコレクションには、多数の緋の目が含まれており、その異常なまでの収集欲がうかがえます。
手段を選ばず目的を遂げようとする彼の性格から見ても、クルタ族襲撃を裏で操っていた可能性は高いでしょう。
この記事では、ツェリードニヒが幻影旅団に依頼し、緋の目を奪わせた黒幕だったという仮説を前提に考察を展開していきます。
幻影旅団員は緋の目に無関心
幻影旅団の団員たちは、クラピカに「クルタ族を襲撃したのはお前たちだな」と問い詰められた際、いまいちピンときていない様子を見せていました。
特にウヴォーギンの反応はその典型であり、その時点ではクルタ族という言葉に対する認識が希薄だったようです。
ウヴォーギンがようやく事態を理解したのは、戦闘の最中にクラピカの目が赤く変化した瞬間でした。
そのとき初めて、「ああ、そういえば戦ったことがある」と口にしています。
つまり、クルタ族を襲ったこと自体は覚えていても、「緋の目」やその背後にある意味について、強く意識していなかったことがうかがえます。
もし幻影旅団が緋の目を目的に動いていたのであれば、クラピカの姿を見た瞬間に気づいてもおかしくなかったはずです。
このことから、彼らが緋の目に執着していた可能性は低いと考えられます。
クルタ族とサラサの殺害方法に共通点がある
幻影旅団の過去には、「サラサ」という女性の存在がありました。
彼女は旅団結成の契機となった人物であり、クロロたち流星街出身の仲間にとっても大切な存在でした。
特にクロロにとっては幼馴染でもあり、その死は彼に強い衝撃を与えたことが描かれています。
サラサの殺され方と、クルタ族の大量虐殺には共通点が見られます。
出来事の順番としては、まずサラサが殺害され、その後にクルタ族が全滅するという流れでした。
この順序を前提とすれば、クロロたちは「サラサを殺したのはクルタ族ではないか」と誤解した可能性も考えられます。
そして、その誤解から「同じ方法で報復した」という仮説も成り立ちます。
ただし、幻影旅団には「無意味な殺しは行わない」という理念が存在しています。
仮にサラサが1人だけ犠牲になったとしても、その報復にクルタ族全体を皆殺しにするような行動は本来の旅団のスタンスとは合致しません。
もし旅団がそうした性質を持っていれば、ヨークシン編でゴンやキルアを捕えたときにも即座に処刑していたはずです。
このように考えると、サラサ殺害とクルタ族虐殺の両方に関わった第三者の存在が疑われます。
そして、どちらの事件も殺され方に共通点があることから、同一人物による犯行だった可能性が高いと言えるでしょう。
その犯人として最も怪しいのが、緋の目を執拗に集めていたツェリードニヒなのではないでしょうか。
クロロはダークウェブの運営者である
意外なことに、幻影旅団のクロロは「ダークウェブ」、いわゆる闇サイトの運営者であることが明らかになっています。
このサイトでは、一般のネット上では絶対に公開されないような情報が閲覧可能です。
この事実は、十二支んのミザイストムの発言から判明しています。
では、なぜクロロがこのようなサイトを運営しているのかという点が焦点になります。
一つの仮説として、彼がサラサの殺され方とクルタ族の事件との関連性を見抜いていたからではないかと考えられます。
頭脳明晰なクロロであれば、すでにサラサ殺害の真犯人がクルタ族ではないと見抜いていた可能性が高いでしょう。
ただし、その人物が誰なのかまでは突き止められていませんでした。
そのため、真犯人をおびき寄せる手段として、クロロはダークウェブを設立したのではないかと推測されます。
緋の目に執着する者を誘い出し、情報収集を行うことが目的だったのでしょう。
実際に、ツェリードニヒが緋の目に関する映像をダークウェブに投稿したことで、旅団は行動を開始するきっかけを得ています。
この展開から見て、クロロがツェリードニヒを真犯人と疑う日は近いと考えられます。
緋の目を使ってサラサの殺人犯を探している
現時点では、ツェリードニヒが真犯人であると断定されたわけではありません。
モレナ一族など、別のマフィアによる犯行だった可能性も存在します。
ただし、物語の展開としては、ツェリードニヒが黒幕である方が整合性が取れるでしょう。
十中八九、彼が真犯人であると考えるのが妥当です。
クロロは、サラサを殺害した犯人を突き止めるために、多方面から手がかりを探しているはずです。
その過程で、クルタ族という存在に行き着いたのではないでしょうか。
そこで、あえて緋の目に関する依頼を受け入れ、真犯人の尻尾を掴もうとした可能性があるのです。
もしこの読みが正しく、ツェリードニヒがシーラやサラサを殺害した上で旅団を利用していたとしたらどうでしょうか。
幻影旅団がまんまと利用されていたことになります。
その事実に気づいたクロロが、ツェリードニヒへの報復に動くことは間違いありません。
ダークウェブなどの情報網を使って、必ずや犯人を突き止めることになるでしょう。
それがなければ、旅団がわざわざ暗黒大陸行きの船に乗る理由がありません。
そして、クラピカは緋の目のうち約9割をすでに回収しています。
残るのは、ツェリードニヒが保有している分のみです。
その状況は、「クラピカ」「幻影旅団」「ツェリードニヒ」の三者が交差するクライマックスの到来を予感させます。
皆殺しは冤罪でも幻影旅団は悪
結論として、クルタ族の大量殺害は幻影旅団によるものではなかった可能性が高いと考えられます。
確かに、幻影旅団が何らかの理由でクルタ族を襲撃したことは否定できません。
しかし、皆殺しについては冤罪だったと見なす方が筋が通ります。
とはいえ、幻影旅団が「悪」であることに変わりはありません。
どれほど正義の意志を持っていたとしても、彼らの行動は盗賊としてのものであり、社会的に許されるものではないからです。
したがって、クラピカの視点から見れば、理由のいかんに関わらず幻影旅団は倒すべき敵であることに変わりないのです。